138号編集室から

  • 2016.02.04 Thursday
  • 11:52
JUGEMテーマ:コラム

☆なかにし礼さんの『平和の申し子たちへ――泣きながら抵抗を始めよう』(毎日新聞社)という詩集を読んで大変感銘を受けた。無謀かつ無法な戦争法案の強行採決前後にこの詩集に出あったことも相乗効果を高めたのだろうが。タイトルになっている詩は次のような詩句がまず冒頭に記されている。
 <二〇一四年七月一日火曜日/集団的自衛権が閣議決定された/この日 日本の誇るべき/たった一つの宝物/平和憲法は粉砕された>
詩文に似合わない新聞記事のような、そっけない語句で、この詩は綴られているのだけれど、心根にどすんと響いた。そうなのだ、二〇一五年九月一九日未明のドタバタ・セレモニーにより参院で可決した戦争法案に対しては、あの時にすでに大鉈が振り落とされていたのだ。歴史は肝心な点が見過ごされ形成されていく。詩人の鋭敏な直感はその事実を見逃さず、この詩を書いたのである。読まれた方もおられるとおもうが、心に届いた詩句を紹介したい。
 

☆<ああ若き友たちよ!/巨大な歯車がひとたびぐらっと/回りはじめたら最後/君もその中に巻き込まれる/いやがおうでも巻き込まれる/しかし君は戦う理由などあるのか/ 国のため?大義のため?/そんなもののために/君は銃で人を狙えるのか/君は銃剣で人を刺せるのか/君は人々の上に爆弾を落とせるのか> なかにし礼さんのこの詩は、七十年間平和がつづいてきた、この国に生まれ育った、戦争を知らない若者たちへ呼びかけるという形式で書かれている。なかにし礼さんは、一九三八年、中国黒龍江省(旧満州)生まれ、戦時下に少年時代を過ごした世代だ。敗戦後は植民地からの引揚者家族の子どもだった。子ども心に戦争の悲惨さ――醜悪、愚劣、残酷、恐怖、飢えの記憶を脳裡に焼き付けている。だからこそか、彼は若者たちに、こんな思想を伝える。<たとえ国家といえども/俺の人生にかまわないでくれ/俺は臆病なんだ/俺は弱虫なんだ/卑怯者?そうかもしれない/しかし俺は平和が好きなんだ/それのどこが悪い?/弱くあることも/勇気がいることなんだぜ そう言って胸をはれば/なにか清々(すがすが)しい風が吹くじゃないか/怖れるものはなにもない> そしてこの詩をこんな詩句で結んでいる。<だから今こそ! もっともか弱きものとして 産声をあげる赤児のように/泣きながら抵抗を始めよう 泣きながら抵抗しつづけるのだ/泣くことを一生やめてはならない/平和のために!> 
わたしは、なかにし礼さんと同世代なので、<だから今こそ!>というなかにし礼さんの決起の真情がよくわかる。


☆この詩を読んでいたので、戦争法案反対の運動に立ち上がって注目を浴びた学生団体シールズの若者たちと,そのリーダー奥田愛基さん(23歳)の行動と思想にわたしも関心を寄せてきた。六〇年代末から七〇年代初頭にかけて旋風を巻き起こした全共闘運動が終息して以降、学生運動は消滅したと言われ、若い人たちの政治への無関心が指摘されつづけてきたので、彼らの出現が脚光を浴びたのだろう。それと彼らのデモが、全共闘時代のデモのようにヘルメットをかぶり角材を武器にするような武闘派的でないことも新鮮に映ったにちがいない。参院中央公聴会の公述人に選ばれた奥田愛基さんはこんな意見陳述をしている。「私たちこそがこの国の当事者、つまり主権者であること、私たちが政治について考え、声を上げることは当たり前なのだと考えている。その当たり前のことを当たり前にするために、声を上げてきた。」この思想こそが民主主義の原則なのだ。この奥田青年のもとに数日前、「お前と家族を殺害する」と記した脅迫状が届いたというニュースが報じられた。自由な声を圧殺しようとする空気が高まりつつある。泣きながら抵抗しつづけよう。

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  • 戸田陽子
  • 2016/05/05 7:11 AM
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