132号編集後記

  • 2015.06.20 Saturday
  • 14:43
JUGEMテーマ:コラム

132編集室から  本間健彦
 
☆渡辺眸さんの写真集『1968新宿』の刊行に併せて去る826日から98日までの2週間、新宿ニコンサロンで開催された写真展『1968新宿』は嬉しいことに大変盛況だった。開催期間中会場で写真集『1968新宿』の販売もしてよろしいという許可をいただいたので、私は連日会場へ出向き、写真集の販売員を務めた。スタッフのMと交代しながら売り子を務めたのだけれど不慣れの作業だったからか正直の話ちょっとシンドかった。けれども同写真集が2週間で百部近く売れたことで、まことに現金な話なのだが疲れも吹っ飛んだ。心配していた印刷代支払の一部に充てる見通しが立ったからだ。「凄いですね!」と主催者ニコンの担当者から賛辞を受けたけれど、これは作者渡辺眸さんが長年かけて磨き培ってきたいぶし銀のような写真作家としての生き方とその作品に共感されてきた方が少なくなかったことを物語るものだろう。また写真展の期間中に、60年代末に出合い仕事や遊びでお付き合いがあったのだけれど、その後会う機会のなかった何人かの仲間と40数年ぶりに再会できたのも嬉しかった。これはたぶん『1968新宿』という写真集と写真展のタイトルに呼応して集ってくれたからではないかと思う。そんなことも収穫だった。


☆フォークシンガーの豊田勇造さんから「ぜひおいで下さい」と案内をもらい、927日新宿区大久保のアートコートで開催された「カラワン40周年inジャパン」に出かけた。カラワンは、70年代初頭タイの軍事政権に反対して蜂起した学生たちの運動を歌で支えたという伝説的な4人組のバンドとして知られてきた。私はタイ語がわかないので、かれらの歌う歌詞もわからない。でもかれらの歌は胸に響き感動した。そこが音楽の良いところだろう。けれどやっぱりどんな歌をうたっているのか歌詞が知りたかった。休憩時間にカラワンのCDなどを販売している売店で『カラワン・ソングブック』(森下ヒバリ編)と題した小冊子が売っているので買おうとしたら、「あっ、本間さん」と販売員の若い男性から声を掛けられた。ビレッジプレスの五十嵐さんだった。「これ、うちで作ったものです」と言う。そういえばかれも『1968新宿』の写真展を見に来てくれたひとりだった。この日は自社制作の小冊子の販売員を務めていたのだ。


☆カラワンの代表曲に「人と水牛(コン・カップ・クワーイ)」という曲があるのだが、早速購入したソングブックをひもとくと、こんな訳詞だ。さわりを引用させてもらおう。「人と水牛の絆は/長い間にはぐくまれ/ともに一生懸命にはたらき/よろこびとしあわせを培ってきた/暮らしは貧しく/涙も枯れ果てた/こころは怨みにはりさけそう」「人間性はうばわれ/貧富が社会を二つに分ける/農民はますます貧しく/農民は野蛮と見下される/ たしかなことは死に往くことだけ」そんな歌だ。豊田勇造さんの解説文によると「タイではカラワンが歌うような歌のことを<生きるための歌>と呼び、生きるための歌をうたうグループがいくつもあり、生きるための歌を大好きな人達がタイ国中にいる」という。そんな音楽状況があったから軍事政権とも闘えたのだろう。日本の今の音楽状況はどうだろうか?ますますいやな感じの時代が到来している今<生きるための歌>を待望したい。

131号編集後記

  • 2015.06.20 Saturday
  • 14:40
JUGEMテーマ:コラム

131 本間健彦

☆街から舎では、今月末に月末に渡辺眸さんの写真集『1968新宿』を出版する。写真集の出版は初めてなので、周囲からは出版を危ぶむ声も少なくなかったのだけれど、天女のような大らかな渡辺眸さんのお人柄に接していると心配や不安も消え、60年代末の新宿体験をした者同士の共感も募り、出版に踏み切った。賽が投げられ、ルビコン河を渡る!オーバーな、と笑われそうだが、小生にとってはそんな気分なのだ。


60年代は、イラストレーターやカメラマンをめざす若者たちがどーつと出現した時代だった。渡辺眸さんも出自としてはそのひとりなのだが、彼女は写真家志望の若者だったわけではない。60年代の半ば明治大学を卒業すると、法令専門誌を刊行する出版社の編集員として務めた。ある時、取材の際、編集長から取材の際「写真も撮って来てくれ」と命じられたが、それまで写真などに興味はなかったので、フイルムの入れ方も分からず困惑したという。その後そういう機会が多くなったので、彼女は撮影技術を勉強するために写真専門学校の夜間部に通った。実習のロケ先は、街が、カウンターカルチュア・ムーブメントの拠点であり、舞台であり、戦場であった、1960年代末の新宿だった。その当時の熱い新宿文化の坩堝の中で彼女は覚醒し、写真家として生きる道を選択する。


☆渡辺眸さんは、2007年に『東大全共闘19681969』(新潮社)という写真集を世に問い大きな反響を呼んだ。あの安田講堂のバリケードの中に全共闘の若者たちと籠城した唯一の女性写真家であり、マスメディアの報道のように外側からではなく、闘争の内側から撮影された写真集だったからだ。だが渡辺眸さんの写真家としての足跡を振り返ると、60年代末の新宿や東大全共闘の写真を撮る写真家としてデビューしたわけではないことが分かる。70年代に入ると、渡辺眸さんは「魂の原郷」に惹かれて何度もインドやネパールを旅し滞在して多くの写真を撮っていて、やがてこれらの写真群は『天竺』『モヒタの夢の旅』『猿年記』『西方神話』等の写真集に結実している。渡辺眸さんは、単にジャーナリスティックな報道写真を撮る写真家ではなく、根源的な精神の在り様を追及してきた写真家なのである。


☆昨年、私は『60年代新宿アナザー・ストーリー』という本を社会評論社から出版してもらったが、街から舎からは、おおえまさのりさんの『魂のアヴァンギャルド―もう1つの60年代』、矢崎泰久さんの『残されたもの、伝えられたこと―60年代に蜂起した文革者烈伝』を出版してきた。なぜ60年代にこだわる本を出版してきたのかという理由を記す紙幅がないが、一言述べるなら、福島の原発事故に遭遇したにもかかわらず根本的な変革を志すどころか、ますます悪しき時代に逆行しようとする愚直な権力者への苛立ちと危機感を覚えるからだろう。渡辺眸さんの写真集『1968新宿』も、そんな思いからの出版なのだ。
☆本号が出る頃には終わっているので告知にならないが、NHK‐Eテレで「ニッポン戦後“サブ”カルチャー史」という10回シリーズの番組がスタートし、その第2(88)に取材を受けて私も登場し、渡辺眸さんの写真も紹介されるという。再放送があったら覗いて見てください。

130号編集後記

  • 2015.06.20 Saturday
  • 14:33
JUGEMテーマ:コラム

130編集室から  本間健彦
 
*『街から』は数少ない定期購読者に支えられて隔月刊で出版しているミニコミ誌だ。こんなこと読者は先刻ご承知のことだから、あえてのべることでもないのだけれど、新しい定期購読者ができると零細誌編集発行人としてはついうれしくなって、リフレーンみたいに朗唱してみたくなる。そんな喜ばしい近例をスケッチ風にご紹介したい。
*本号から「おしるこ通信」と題するコラムの連載を始めた門脇篤さんは仙台在住のアーティスト。門脇さんは記事内に登場しているふなばしコミュニティアート主宰の下山浩一さんと活動を共にしていて、私は昨年暮、ふたりが新宿歌舞伎町で展開していたイベント会場で出会った。私には彼らの活動の実態はまだ把握できていないのだが、仙台・船橋・新宿といった飛び地の街であまりビジネスにはなっていそうもない活動を行っているその遊撃的行動力と、当節には珍しい茫洋かつ真摯なスピリットに注目し、おお、こういう人間がまだ生息してくれていたのか!と感動したのだった。
*前号のこの欄で詩人の高木護さんが主催した梅酒の会に参加した話を記したけれど、そこで出会ったのが西谷晋さんと吉沢輝夫さんだ。西谷さんは高木さんが薦めてくれたのかどうか数年前から定期購読をしていただいてきたが、お会いするのは初めてだった。元日本経済新聞外報部、ボン特派員だったという経歴などもこの時初めてお聞きした。吉沢輝夫さんとは何と30数年ぶりの、しかも予期せぬ再会だった。七〇年代、新宿を追われた後、私はフリーライターをしていたのだが、そのころ私鉄PR誌の編集長をしていた吉澤さんに目をかけてもらい連載記事などを書いていたのだ。吉澤さんがこの会に参加したのは、西谷さんら仲間たちと同人誌(仲間内では“遊人誌”と呼び合っているとか)をやっていて、その雑誌の寄稿者の高木護さんに誘われてのことだった。矢崎泰久さんが間もなく当舎から出る新刊書の「あとがき」で「人と人を繋ぐ不思議」ということをのべているけれど、良い出会いこそが僥倖というものだろう。
*四月の末、墨田区在住の国崎清秀さんという方から定期購読の申し込みとお振り込みをいただいた。どんな方なのかな、と御礼のご挨拶を兼ねてお電話したところ、奥様が出られて「いい雑誌なので定期購読しようかな、と言っておりました。主人はライブハウスをやっています」と言われたので、あつ、と気づいた。前号で中川五郎さんがピート・シーガーとニューヨークの自宅で会った話を書いているが、その時案内人として同行しているのが両国にある東京フォークロア・センターの国崎清秀さんなのだった。もちろんその記事は読んでいたのだが、像が結びつかなかったのだ。
*GWの初日、アメリカ・カルフォルニア在住の稲垣元彦さんという方から定期購読申込みのメールが届いた。小舎の休眠状態のHPを偶然見て、『街から』というタイトルが気に入られたとか。海外の読者はイタリア在住の神田真理子さんに次いで二人目だ!アメリカの街からのお便りを期待したい。

 

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